第28章 藤の花の家紋の家と癒猫様
茂「その鬼は人間の時の記憶がないみたいなので、最初はただその女性を気まぐれで生かしているのだと思ったんです。」
茂「でも、昨晩は女性が起きてて…その鬼を人の名で呼んだんです。俺等に "斬らないで" と言っていたのでおそらく元々は知り合いだったのだと…。」
隆「俺達はその女性が居る所まで三回行けた事があるんですが、三回とも女性の足が岩で固められちゃってて助け出せなかったんですよ。」
隆「近付こうとするとその鬼が過剰に反応して行く手を阻むし…。それから、女性はやつれた様子も、飢えた様子もなく、着物にすら汚れがないんですよね。」
それを聞いて桜はユキの背中をぎゅっと掴んだ。
「も、もしかして…その女性が水琴さんなのかしら…!」
茂「え……水琴さん…って、まさか煉獄さんが言っていたここの奥様でしょうか…?」
そう問われて桜はつい顔を出して勢い良く こくこくと頷いた。
ここに来て初めて顔を合わせた三人はお互いにピシッと固まる。
ユキが面白そうに皆の固まった顔を眺めると、それを受けて三人はハッとしたように我に返った。