第27章 仲直りとお買い物
杏「桜…耐えられそうにない。こちらを向いてくれないか。話をしたい。」
その意志の強い声色に桜は眉尻を下げる。
「…私もこの空気苦手ですが、後々のパワーバランスを考えると今和解するわけにはいかないんです。」
杏「すまないが何を言っているのか分からない!抱き締めても良いだろうか!」
その勢い良く返ってくる声を聞いて、桜は初めて杏寿郎の目の前で目を覚した時の事を思い出した。
(あの時は勢い良く『抱きしめ返して欲しい!』って言われたっけ…。鍛錬以外でも真っ直ぐすぎて戸惑ったな…。)
そんな事を一瞬考えたあと桜はハッとする。
「…………?」
(すぐに断らなかったのに杏寿郎さんが手を出してこない…。もしかして待ってくれてるの………?)
そんな考えに至ると振り返りたい気持ちが湧いてきてしまい、桜はふるふると頭を振って気合いを入れ直す。
「だめです。気持ちの切り替えが上手なのは杏寿郎さんの長所ですが、すぐ切り替えちゃだめな事もあります。一晩は…、待ってください。」
杏寿郎はその意志の強い静かな声を聞くとスッと力を抜いた。