第24章 不思議な縁と晩酌
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千寿郎は、槇寿郎が酒瓶を手に持って来たのを見てからずっとそわそわとしていた。
千(きっと三人で飲むんだ…。またおつまみを作ったら頭を撫でてもらえるかも…なんて欲張りかな…。)
そんな事を考えていた為、居間を出た千寿郎はすぐにつまみを作り始めた。
千(鯛が余っているから早く昆布締めにして先に冷蔵庫で寝かせておいて…。あさりは明日のお味噌汁用だったけど、この前蛤を出して全て食べてもらえたし、玉ねぎと舞茸と一緒に蒸して……、)
千寿郎は無意識にむずむずと口角を上げながら用意をしていった。
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一方、説教が予想外の終わりを迎えた居間では槇寿郎と桜が浮かない顔をしていた。
杏「父上!お注ぎします!!」
杏寿郎の嬉しそうな声で我に返ると、槇寿郎は浮かない顔のままおちょこを手に取って差し出す。
しかし慎重に注ぐ心底嬉しそうな息子の顔を見ていると、桜を見ていたときと同じように毒気を抜かれてしまった。
槇「………お前らは似てるな…。」
槇寿郎がそう呟くと別に褒めた訳ではなかったのに二人は目を丸くしてから嬉しそうな顔をする。
続いて杏寿郎も槇寿郎に注いでもらった。
その時 杏寿郎の顔に笑みはなく、ただ注いでくれる父の手を大きな目で真剣に見ていた。
桜はその光景を見て、嬉しさから胸がきゅっと苦しくなった。