第20章 ※一人で
その言葉に険しい顔のままの杏寿郎が目を開く。
「………………。」
(………え?)
杏寿郎が知らない鋭い目をしていたので桜は固まってしまった。
杏「ありがとう。収められなくて情けないな。」
言葉は優しかったが、普段と違う余裕の無さと…、
(…これは…、何だろう…。何か…雰囲気が……少し怖い…。)
そう思うと桜は思わず距離を取った。
だが杏寿郎はすぐに桜の腰に手を当て、再び抱き寄せる。
「あの…私、邪魔になるので…。」
そう聞くと杏寿郎は一度目を閉じて深く呼吸をし、目に柔らかさを取り戻した。
そしていつもより余裕はないものの、桜を安心させるように眉尻を下げて微笑む。
杏「すまない。今君を怖がらせたみたいだな。」
その言葉に桜はハッとする。
「…あ……ごめんなさい。何だか杏寿郎さんの雰囲気が違ってびっくりして……。」
杏寿郎はそれを聞き困ったように笑った。