第17章 覚悟と誠意、新しい関係
槇「嫁に欲しいと言われる前に、養子にならないかと言われかねん幼子の様な顔だな。」
と槇寿郎はこれまた意地の悪い事を言った。
しかし、桜は "嫁" という言葉から昨日の意外な杏寿郎の考えを思い出して頬を染める。
槇(…何故赤くなる。杏寿郎の前ではお前は猫だろう。今のところ嫁という言葉とは無縁だぞ…。)
実りそうにない桜の恋心を想い、槇寿郎は思わず不憫そうに桜を見つめた。
そんな事には気が付かず、桜は千寿郎のご飯を頬張ると 相変わらず蕩けた顔をしたのだった。
――――――
「ご馳走さまです!」
食べ終わると桜は行儀良く手を合わせた。
槇寿郎も静かに箸を置く。
そしてちらっと桜を見ると、眉を顰めながら口を開いた。
槇「お前…体の方はどうだ。馬鹿みたいに鍛錬しているだろ。」
それを聞いて桜は少しだけ目を大きくする。
「…はい!基本は走り込みをしているのですが、基礎体力は着実に付いてきていると思います!それから動体視力が少し上がりました!」
「それから呼吸の方は…、」
そう言いかけると槇寿郎が驚いて膝立ちになった。
槇「お前、呼吸を会得しようとしているのか!?猫の体でか!」
その呆れたような声に、桜は少し拗ねたような顔をした。
「そうですよ。身体強化されますもん。だめでしたか?」
それを聞いて槇寿郎は少しの間、口を開いて複雑な顔をしていたが どすっと座った。
槇「体を強くするのは悪い事ではないが、間違っても思い上がって鬼の前に出るなよ。お前など隊士に比べたら馬鹿みたいに弱いんだ。すぐに死ぬ。」
それを聞いて桜はそれを聞いて嬉しそうにパッと顔を明るくさせる。
「はい!!」
桜は、素直な言い方ではないが 心配してくれている槇寿郎の言葉をとても嬉しく思ったのだ。