第95章 続々と
三つ子はランドセルを背負って2人を追い、槇寿郎と瑠火も見送りに行く為にそれについて行き、桜はまだ2歳になっていない璃火と共に居間に取り残される。
「璃火、今日からは皆がお外に行ってもお祖母様とお祖父様がいらっしゃるよ。嬉しいねえ。」
そう言うと璃火は桜の言った事から単語を拾ってオウム返しをし、そして桜が口にしていない『パパ』という言葉も発した。
「……パパはお仕事だよ。」
そう言うと何故だか急にとても寂しくなってしまい、泣き出した桜は帰ってきた槇寿郎と瑠火を慌てさせたのだった。
その事について槇寿郎は『何かしたのではないか』『桜を構っていないのではないか』と帰ってきた杏寿郎を問い詰めたが 杏寿郎は身に覚えなど無い。
杏「今日、俺を見送った後泣いてしまったそうだな。」
「えっ」
杏「どうした。」
本人に伝わるとは思っていなかった桜は槇寿郎に口止めしなかった事を後悔した。
「……理由は…自分でも分からないんです。ただ、リビングでお見送りしたら寂しくなっちゃって……。」
杏寿郎は『そうか』と短く言うと布団の上で桜の背を優しく撫でながら熱い体温を分け与える。
それによって強張った体はすぐに解れた。
杏(マタニティブルーになったのだろうか。今まではならなかったのに何故…。)
しかし漠然とした不安は杏寿郎が側に居れば嘘のように無くなる。
「今朝は…特別だったみたいです。もう何ともないので安心して下さい。」
桜は本心からそう言って微笑んだ。