第95章 続々と
「いつも感謝しています。」
杏「君に比べたら大した事はしていない。」
心底不可解そうに言う杏寿郎が愛おしく、少しだけ懐かしく感じる煉獄家の本家で桜は杏寿郎の頬を労るように撫でて『ありがとうございます。』と呟いた。
そして見送る為に腰を上げようとすると杏寿郎は慌てて止める。
杏「ここで十分だ。体を休めていてくれ。」
「…でも……、」
杏「頼む。」
そう縋るように言われては食い下がれず桜は少し寂しそうな顔をしながらも頷いた。
それを見ると杏寿郎は自身の隣に控えている厚寿郎と桜の横でぽーっとしている璃火の目の前でキスをし、頬を撫で、再び額にキスを落としてから立ち上がる。
桜は流され易い性格からこのスキンシップに随分と慣れてしまっていた。
そんな桜の後ろでは槇寿郎が口を開けて固まり、瑠火は口に手を当てている。
杏寿郎は相変わらず堂々とした空気を纏いながら仕上げの様に桜の頭を優しくぽんぽんと撫でると桜の隣に居た璃火の事も撫でてから厚寿郎の手を取ってリビングの出口の方へ向いた。
杏「では行ってくる!!」
厚「いってきます。」
「2人とも行ってらっしゃい、気を付けてね。」
迷い無くリビングを出ていく杏寿郎の歩みを見ながら桜はその大きな背中に手を振る。
すると杏寿郎は一度だけ振り返って太陽のような笑みを返した。