第95章 続々と
「杏寿郎さんこそ。いつまでも変わらずに接してくれます。」
杏「この年齢の時、俺は独りだったのでな。毎日嬉しくて幸せで堪らない。」
そう心底幸せそうな笑みを浮かべながら言われると 桜は腹に気を付けながら杏寿郎を抱き締めた。
「独りだった時間…、一緒に越えましょう。」
杏寿郎は静かに返事をしながら一瞬抱き締め返そうとしたが、加減に自信を持てなかった為 桜の背を優しく優しく撫でた。
―――
そんな梅雨の季節になる2ヶ月前、上の子達は小学1年生となり、厚寿郎は天満と同じ幼稚園に年中児として通っている。
そして温厚な厚寿郎とやんちゃな天満は0歳からの友という事と性格が真逆な事からなんだかんだとても仲良くしていた。
そんな厚寿郎は送迎バスで幼稚園に通っていたが、それもこの週明けから変わる。
腹がいよいよ大きくなってきたので桜が再び杏寿郎の実家へ帰るのだ。
そして子供が多く人手が要る事と杏寿郎の『桜と離れたくない』という強い希望から他の家族も実家の方へ移ることとなった。
そうすると新しく建てた家から近い幼稚園と小学校に通っている厚寿郎と三つ子達は当然送迎が必要となる。
厚寿郎の幼稚園は駒校から本当に近いので問題ないとしても三つ子の小学校は少し離れた場所にある為 朝は前より忙しくなりそうだった。
「迎えはお義父さまが買って出てくださいましたが…、その、送りも甘えてはいかがですか…?大変そうで心配です。」
杏「少し早く出れば良いだけの事だ!普通の出勤と大して変わらない!!」
他に変わるとしたら幼稚園の先生の心音だろう。
そんな事を予想しながらも桜は杏寿郎の一途さを思い出して嫉妬の心を抑える。