第95章 続々と
「厚寿郎と天満くんみたいに桃寿郎も炭彦くんと交流が出来るといいですね。」
杏「そうだな。」
梅雨の季節、桜は自身を後ろから抱いて座りながら腹を撫でている杏寿郎の髪を片手でもふもふと触っていた。
杏寿郎はそうされる事にもう慣れていたが、桜はこの季節のふわふわが増した杏寿郎の髪の触り心地が大好きで 何年経っても飽きないのだ。
杏「この髪を鬱陶しく感じる季節も君が嬉しそうに触れてくれるのなら悪くないと思えるな。」
「ご自身で触って癒やされないのですか?」
杏「俺はこちらの方が好ましい。」
そう言いながら杏寿郎は腹から手を離して桜の髪を梳く。
その髪は湿気によっていつもより更にストンとしていた。
それ故に桜は不可解そうな声を出す。
「今の季節 私の髪はいつもより更に動きがなくてつまらないですよ。」
杏「癖っ毛持ちからしたら広がらない髪は大変羨ましいのだぞ。」
「そうなんですね…私はこの髪が大好きです。」
そう言いながら桜は少し振り返って杏寿郎に微笑んだ。
そしてそのまま横向きになって杏寿郎の胸に体を預けながら今度は両手で髪をもふもふと触る。
それを愛おしそうに見つめる杏寿郎は更に誕生日を迎えて42歳になっていた。
桜は自身の行動を大きな目で観察している杏寿郎を見つめ返すとふわっと微笑む。