第95章 続々と
「彩火は結構言い寄られるみたいですが、『お兄ちゃんよりカッコいい人じゃないとイヤ。』と言ってバッサリ切っているようです。」
杏「そうか。……兄か。」
杏寿郎は安心して息をついた後 複雑そうな顔をする。
桜はそれを見て笑わないように頑張ったが杏寿郎はめざとくその表情に気が付き眉を寄せた。
杏「よく聞くだろう。幼い頃は『お父さんと結婚する。』と言うのだと。なのでただ彩火は違うのかと思っただけだ。」
「ふふふ。」
桜が堪えきれず笑い声を漏らすと杏寿郎は璃火がぽーっと見ている目の前で桜の手首を掴み燃える目を向ける。
その瞳が少し怒っていた為 桜は笑いながらも少し眉尻を下げて申し訳なさそうにした。
「違うんです。私が『何でお兄ちゃんなの?お父さんじゃないの?』って訊いたら『お父さんはお母さんのだから。』って言ったんです。」
それを聞くと杏寿郎の瞳に燃えていた荒い色の炎がしゅっと消える。
そしてそのままどさくさに紛れてキスをした。
「杏寿郎さん!璃火が、」
杏「彩火公認の仲なのだから良いだろう。」
「良くはないですよ…!記憶に残っちゃったら…、」
杏「もっと大胆な事をしておいて言う事ではないな。」
余裕たっぷりにそう言う杏寿郎を恨めしそうに睨みながら赤くなっていると視線を感じ、桜はパッと顔を横に向ける。
すると廊下を通り掛かっていた三つ子が足を止めて2人を凝視していた。