第15章 兄弟の想いが詰まった晩酌
そう思いながらも急いで食器を片し、千寿郎の部屋の前に膝をついて小さく呼びかけてみる。
すると、サッとすぐに襖が開いた。
「…っ!!…びっくりした…!…気になって寝れなかったの…?」
千寿郎の頭を撫でながら微笑んだ。
千「…は、はい……。」
不安そうに眉尻を下げる千寿郎が愛おしくて、まだあどけなさが残る頬を両手で包むと桜は花のように笑った。
「大成功だよ!美味しいって! "今までで一番美味しいお酒とおつまみ" って言ってた!槇寿郎さん 大事に食べてたけど、あっという間になくなっちゃったよ!」
千「……っ!!…ほん、と…ですか……。」
千寿郎は瞳は大きく揺れていた。
そして桜の手に自身の手を重ねると、ぎゅっと掴んで肩を震わせる。
(お父さんに褒められるって経験、物心ついてからずっとなかったのかもな……。)
そう思いながら宥めるように背中を撫でる。
桜は千寿郎を抱きしめたい気持ちもあったが、今は与えられる心地良さよりも 自身が抱いた本当の感情をしっかりと味わって欲しかったのだ。
(よかったね…一生懸命作ったんだね……。)
桜は廊下に落ちる雫を見て、涙をにじませて微笑んだ。