第15章 兄弟の想いが詰まった晩酌
槇(杏寿郎は異常なまでの使命感を持っている。いくら…………少し…少しばかり可愛かろうと、女に反応するようには思えない…。)
何故か不憫な者を見る目でこちらを向く槇寿郎に気が付き、桜は目を大きくした。
「えっ?…本当に平気ですよ!それとも死相でも出ていましたか…!?」
慌てふためく桜から視線を逸らすと、槇寿郎は酒を煽って、 "いや…" と小さく呟いた。
そしてふと気が付く。
槇「お前…杏寿郎の前では人の姿に戻れないんだよな…?」
「…はい。」
桜の苦笑いを見て槇寿郎は溜息をついた。
槇(絶望的だな…話せるとはいえ、猫に惚れたら杏寿郎は頭がおかしい。)
槇「お前、可哀想だな。」
そう言いながら本当に憐れむ目で見る槇寿郎。
桜はそれを見て目を大きくした。
「…えっ」
(ど、どういう事……?)
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それから、煉獄家の過去や 今の状態については一切話さず、桜の時代の暮らしぶりなどを話した。
槇寿郎はあまり信じてくれなかったが、それでも他愛もない話は楽しかった。
酒もつまみも美味しく、槇寿郎は時折おちょこに視線を落として目を細めていた。
その顔に笑みがあるわけではなかったが、なんとなく桜は温かい気持ちになった。
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槇「お前、顔が真っ赤だぞ。そろそろ水を飲んで寝ろ。」