第15章 兄弟の想いが詰まった晩酌
「わ、わ、当たり前だけど、今まで飲んでたのと違う…!!すっごい口当たりいい!セーブしないと危ないな…するする飲めちゃう…。ほんとう美味しいですね!」
興奮して槇寿郎に話しかけると、槇寿郎もご機嫌な様子で既に手酌でおかわりをしていた。
その顔は意地悪な笑みではなく、本当に嬉しそうな笑みが浮かんでいた。
手酌を見て桜は慌てる。
「あ!注ぐのに…、」
槇「いい。気にするな。」
(…杏寿郎さん、美味しそうに飲んでるの知ったら喜ぶだろうなあ……。)
そう思い、ふわふわしていると槇寿郎が桜を見た。
槇「…………これ、杏寿郎が買っただろ。」
その言葉にビクーンと体が震える。
「え、あ……そうで、す。」
槇「お前が買えるわけ無いからな。」
(うっ…悔しい、けど!それよりも嬉しい…杏寿郎さんが買ったと分かってても笑ったんだ……。)
槇「それで、こっちのつまみが千寿郎か。」
―――ビクーン!
槇「………お前、そのわかりやすい態度、どうにかした方がいいぞ…。」
槇寿郎は眉を寄せて呆れた顔をした。
「う…自覚はしてます………。」
そう答えながらちらちらと動きを伺っていると、槇寿郎が箸を持った。
「!!!」
が、すぐに置く。
「……っ!!」
(なんで…………?)
と思ったらまた持つ。
「!!!!」
(迷ってるのかな…?千寿郎くんきっと一生懸命作ったよね…。絶対に食べてほしい…!)
そう願っていると箸は一向に動かない。
不思議に思って槇寿郎の顔に視線を向けると……、
「…あっ!!…そんなっ!…い、意地悪だ!!!」
槇寿郎は桜の様子を見ながら遊んでいたのだ。
その顔にはまた意地悪な笑み。
槇「少しは表情を制御できるようになった方がいいな。」
そう言うと、躊躇いなくつまみに箸をつけた。