第15章 兄弟の想いが詰まった晩酌
「…えっ!?杏寿郎さん二十歳なんですか…?年上だと思ってた……。」
槇「……ああ。それよりいつまで廊下に座り込んでる。早く酒をもってこい。」
息子の話になると居心地悪そうになったのを見て、襖の影に隠れていた千寿郎を心配して様子を見る。
しかし、千寿郎は父がよく喋るのを初めて見たようで ただただ大きく目を見開いていた。
「では、失礼します。」
そう言いお酒とおちょこをまず槇寿郎の近くに置く。
それからまた廊下に戻ると千寿郎の持っていたお盆を受け取る。
桜は千寿郎に目配せしたが、千寿郎は首を振り小走りで去っていった。
(やっぱり自分が用意したとは言えないのね…。こんなに美味しそうなのに…。)
「おつまみもあるんですよ!」
そう振り返るとパッと槇寿郎は視線を逸した。
(あ、この反応は千寿郎くんに気付いたな…。)
視線を酒に向けた槇寿郎はすぐに機嫌が良くなった。
槇「…これ、高かっただろ。………盗んできたんじゃないだろうな?」
「ほんっとひどいですよ!ちゃんと……その、買いました!私、安酒でも美味しくいただけちゃうので、実は高いお酒は初めてです!」
そう目をキラキラさせながらお箸を並べる。
槇寿郎も飲めれば何でも良かった為、質の良い酒は久しぶりだった。
「では、早速ですが、いただきましょう!お注ぎします!」
スッと黙って差し出されたおちょこに とぽとぽと杏寿郎が用意してくれた酒を注ぐ。
槇寿郎も桜に注いでくれ、少しおちょこを上げると二人同時に口をつけた。
槇「……!」
「……………っ!!!」