第15章 兄弟の想いが詰まった晩酌
(……二日目でこんな事言うものじゃないだろうけど……、)
「遠いなあ………。」
門の外まで見送っていた千寿郎がパタパタと駆け寄ってくる。
千「桜さん!」
「なーに?」
千「あの…桜さんが鍛錬をしている間に買い物へ出掛けたのですが…、癒猫様って心当たりありますか…?」
「……んぐ!!」
(このお家の近くまで噂広がったの!?走り込みの時に目撃されたら、このお家に面白がった人が来ちゃうかもしれない…!)
深刻そうに俯く桜を心配そうに見て、千寿郎は膝に手をやり屈むようにした。
千「…あの、やっぱり癒猫様って桜さんの事なんでしょうか?…わ、悪い噂じゃないですよ!」
「うん…お館様のお屋敷から帰るときに寄った街で少し騒動を起こしまして……。ちなみにどんな噂…?」
千「えっと…、『喉の小骨も取りに来てくれる、庶民的なねこ神様』…だそうです……。みんな神様だって認識していて、とても好意的でしたよ。」
「そ、そっか…!ホッとしたよー。教えてくれてありがとう。」
そう言うと ふわっと人の姿に戻り、千寿郎の頬を両手で包んだ。
千寿郎は照れたように笑うと、
千「あ、兄上に合わせて作ったので、もう夕餉の支度ができています!まだ鍛錬されるようでしたらあとで温めますが…どうしますか?」
と首を傾げた。
桜はまだ呼吸の鍛錬が心残りだったが、千寿郎のご飯を一度冷まさせるのはとてももったいなく感じて頂く事にした。