第15章 兄弟の想いが詰まった晩酌
―――ハッ ハッ ハッ…
「孤独に、負けずっ……百周した、ぞー…!」
なんとか走り切ったとき、陽に色がつき始めていた。
(次は、教えてもらった通り呼吸の基本!基礎!基礎こそ全ての要なり!!)
桜は鍛錬モードに入り、目はキラキラしていた。
ふるふるする脚をなんとか立たせると、深く深く集中していく…
が、
―――ザッザッ
聞き覚えのある足音を拾い、パッと目を開ける。
(杏寿郎さんの足音だ!これから任務に…!)
桜が急いで門へ向かうと、杏寿郎とその後を追う千寿郎にちょうど鉢合わせた。
杏「桜!鍛錬 頑張っているな!!気を散らせてしまったか?」
そう言いながら頭にぽんっと手を乗せる。
「いえ!お見送りはしたかったので良かったです!!」
杏「そうか!ありがとう!…桜はまだ連れていけないが、一週間も経てば様子を見つつ同行する事になるだろう。」
(…っ…一週間…!?)
桜の動揺を察したのか頭に乗せた手を優しく動かす。
杏「なにも一週間で立派な隊士を目指せと言っている訳ではない!君はまだ強くはなれないだろう!だからこそ俺がいる!!心配するな!!」
そう言うと仕上げのようにぽんっと軽く叩き、杏寿郎の大きな手が頭から離れた。
(心強い……本当にこの家に来れてよかった……。)
「ありがとうございます!でも!死ぬ気で鍛錬します!!」
それを聞き、門へと向かっていた杏寿郎はくるりと振り返ると太陽のような笑みを浮かべた。
杏「うむ!いい心掛けだ!!では、行ってくる!!!」
そうあっさり言うと杏寿郎は門を出て、あっという間に気配を消してしまった。