第15章 兄弟の想いが詰まった晩酌
「…夢?」
千「え、あ、いえ……抱きついても変化がありました…。ですが…、」
言い淀む千寿郎に桜は不安そうに眉尻を下げる。
千「あの、桜さんが目を閉じている間、とても変な感覚になりました…夢、見てるみたいな……。世界が変わっちゃったかのような…。」
「え…。なにそれ怖い…。」
(私が目を閉じてる時に抱きついた人は夢見てるみたいになる…?目を閉じてる時の私、怪しい薬みたいじゃない……。)
「あ、ありがとう…半分千寿郎くんをからかう目的でやったけど…新事実を見つけられてよかった…。」
千「からかわないでください!!」
"ごめんね" と笑いながら頭を撫でてるうちに、ふとある事に思い至る。
(杏寿郎さんも影響受けちゃった事あるのかな……。)
(いや、でも向こうが先に寝るから違和感に気が付かないかな……。それに途中で起きても夢見心地になるなら夢か現実か気が付かない可能性も高いし…!)
"うん!" と満足気に頷くと、首を傾げてこちらの様子を見ていた千寿郎くんに視線を戻した。
「そういえば杏寿郎さん、今仮眠とってるんだっけ?」
千「はい!今夜は任務なので…。」
「そっか…今夜は見廻りじゃなくて鬼がいる場所に…。」
(人喰い鬼…心配…だな……。)
(……それにあんなに毎回湯たんぽにしたがってたのに、何で今回は私の事連れ攫わなかったんだろう…?)
不思議に思いながらも、桜は "鍛錬をしてくるね" と千寿郎に告げて庭へ降りていった。