第63章 久しぶりで初めてのデート
杏「君は本当に放っておけないな。おいで。」
杏寿郎が自然な流れで手を差し伸べる。
桜も頬を染めつつそれを自然と掴んだ。
杏寿郎は車から玄関に向かうまで何度もぎゅっぎゅっと確かめるように桜の手を握り、それが可愛らしく感じた桜は眉尻を下げて微笑んだ。
(格好いいのに、たまにとっても可愛い。……不思議な人。)
そう思っているとあっという間に玄関に着き、杏寿郎がインターホンを押した。
その音に桜はビクッと肩を跳ねさせる。
杏寿郎はその様子を見て笑うと、隙だらけの桜の額にキスをした。
すると―――、
男「杏寿郎、見えているぞ。」
「……っ!!!」
杏「すみません!!」
父親と思しき男の声がインターホンから聞こえ、桜はこれ以上ないという程慌てたが 杏寿郎は何故か眩い笑顔のまま謝った。
するとすぐに玄関が開き、凛とした姿の着物を身に着けた女性が出てくる。
桜は慌てて深く頭を下げた。
「わ、私、一ノ瀬 桜と申します!こちらささやかですが良かったら受け取って下さい!!」
そう言いながら手土産を差し出すと、くすっと第一印象とは異なる優しい笑い声がして桜は不思議そうな顔をしながら頭を上げた。
すると女性は手土産を受け取り、小さな、それでいて優しい笑みを浮かべた。