第63章 久しぶりで初めてのデート
杏「弟に暴力を振るった子供達を思い出した君の目は非常に恐ろしかったぞ。あれの自覚はあるのか?」
「えっ……な、ないです!」
いつも通りの様子で赤くなって慌てる桜を横目でチラッと見ると杏寿郎は微笑んだ。
杏「そうか。……俺に傷を付けた相手に対してもその目で睨んでくれた。あの時は気が気じゃなかったが今となっては懐かしい。」
「杏寿郎さんが……?」
そう言いながら桜は車に入るなりジャケットを脱いで中に着ていた服の袖を肘下まで捲っていた杏寿郎の腕を見つめる。
顕になった腕は明らかにしっかりと筋肉が付いていてとても逞しい。
男の肌に慣れていない桜はそれを見ると頬を赤らめてパッと視線を自身の膝に落とした。
杏「剣道をしている。」
「えっ、あぅ……、」
桜は盗み見ていた事がバレていたのだと気が付くと更に赤くなる。
「け、剣道……いくつからされてたんですか?」
杏「父が道場を開いているのでな、物心ついた頃には竹刀に触れていた!」
「へえぇ!!私、武道はからっきしなので尊敬します!」
杏「だが君は箏も弾ければピアノに華道、茶道、フルートも吹けるのだろう?ああ、そうだ!宇髄……君を知る同僚に聞いたのだがお母様は書道をやっていらっしゃるそうだな!実は俺の母は書道教室を開いている!」
「えー!母は知ってるのかな…もう何度かお電話して仲良くさせて頂いてるみたいです!!」
桜は手を合わせるととても嬉しそうに笑った。
一方、自身が教えた電話番号の意外な使われ方に杏寿郎は目を丸くする。