第63章 久しぶりで初めてのデート
(あれ……どうしよう、良くないことを言ってしまったのかな…。)
そう桜が心配した時、杏寿郎はスッと息を吸って深く吐いた。
そして笑みを取り戻す。
杏「そうか。……とても嬉しく思う。心から嬉しく思う。」
喜びを噛み締めるように出した声色は今までで一番柔らかく優しく、桜は何故だか涙が出そうになってしまった。
それから杏寿郎はいつ出会ったかについては伏せながらもこれから会う家族の説明をした。
家族は4人で兄弟は歳の離れた弟がいるとの事だった。
杏「千寿郎は俺より13歳も年下でまだ中学一年生だ。」
「へぇぇ!!私の弟も……、」
桜は笑顔でそう言いかけて固まった。
弟が今どうしているのかについて訊かれたら杏寿郎に気を遣わせてしまうと思ったからだ。
杏寿郎はその考えを察すると静かな声を出した。
杏「先に謝っておく。不快に思ったらすまない。……俺はみのる君についても君から話を聞いている。隠さなくて良い。とても優しく、正義感が強い自慢の弟だったのだろう。」
「………………はい……。」
まさか自身がそこまで話しているとは思っていなかった為、桜は重たい空気を解いて思わず呆けたようになってしまった。
杏寿郎はその空気を肌で感じるとほっとしたように息をついた。