第63章 久しぶりで初めてのデート
杏「昼はまた別に食べるので腹一杯にしてはだめだぞ。遅い昼になってしまうがこれを食べて許してくれ。」
「…………………………えっ!?」
桜は目を大きくして杏寿郎の手さげを見つめた。
(15個くらいあったけど杏寿郎さんは何個食べるつもりなんだろう……。私は2つ食べたらお昼食べられなくなっちゃうかも…。でも残しちゃいけないし…、)
杏寿郎は大きな目でじっと桜を見つめると心の内を悟ったのか笑みを浮かべる。
杏「君は無理せず美味しく食べられる範囲で食べてくれればいい!俺はいくらでも食べられるので心配しないでくれ!一人で20食べたこともある!!」
「ふわ…すごいですね……。」
驚く桜の表情が堪らなく愛おしく、杏寿郎は再び優しく微笑みかけてそっと頭を撫でた。
その大きい手のひらに撫でられると桜の体からは力が抜け、表情も無防備なものになってしまった。
杏「こら。外でその様な顔をしては駄目だ。」
そう注意する杏寿郎の声は言葉と矛盾するように柔らかく、そして幸せそうであった。
「……どんな顔ですか?」
不思議そうにそう問われると杏寿郎は言葉に詰まってしまう。
杏「…いや……桜、もう食べよう。あと20分で次の幕が上がる。」
「えっ……あ、はい!」
あんこの中に紅白餅が入っている事に驚き、『本当だ!おめでたいです!』と喜ぶ桜を見つめながら杏寿郎は僅かに眉尻を下げた。