第63章 久しぶりで初めてのデート
杏「いや、気にしないでくれ。」
(……ユキ様、私にくっついていたって言ってた…。それが胸だったって事なのかな…。思い出したい…。)
「あ、あのっ!今度 杏寿郎さんも会いに行きませんか?ユキ様が一緒に来てほしいって言ってたんです。それに…、その……母も、杏寿郎さんに会いたがっていますし………。」
それを聞くと杏寿郎はパッと顔色を明るくさせる。
杏「うむ!ユキとは話せないかも知れないが是非連れて行ってくれ!お母様と会えるのも楽しみだ!!」
そんな事を話しているとあっという間に開場の時間となった。
杏寿郎はその時間にしか聴けないというお囃子を桜に聴かせる為にきっかり開演30分前に入場した。
杏「ほら、君の分だ。」
桜が大間の装飾に夢中になっている間に必要なものを用意していたらしく、差し出された杏寿郎の手には筋書とイヤホンガイドが乗っている。
桜は杏寿郎に導かれた明らかに良い席に座りながらそれ等を受け取った。
「ありがとうございます。いつの間に……。」
杏「先程一緒に取りに行ったろう。相変わらず君は隙だらけだな。心配になるぞ。」
そう言ったものの杏寿郎は微笑んでおり少し楽しそうな空気を纏っている。
桜がその様子を微笑ましく思って見つめると杏寿郎はすぐに桜の心中を察した。