第63章 久しぶりで初めてのデート
杏「どうした。」
「あ、いえ…ちょっと…可愛いなあって。」
桜が可愛いと思う時は好きだと思う時だと知っていた杏寿郎は笑みを深める。
それを見て桜は喜んだのだと勘違いをした。
列の1番前まで来ると杏寿郎は当然のように2人分の注文をする。
桜は慌てて財布を出したが杏寿郎はスマホをかざして手早く支払ってしまった。
杏寿郎は桜が自身の分は支払うと食い下がるかと思ったが、桜は眉尻を下げながらも大人しく礼を言って引き下がった。
杏「…………やはりこの特権は良いな。」
「…え……?」
杏「いや、何でも無い!」
杏寿郎は満面の笑みを浮かべてそう言いながら歌舞伎揚げが乗ったソフトクリームを差し出す。
桜はそれの存在を知ってはいたが食べた事がなかった。
杏「揚巻ソフトだ!君は食べ物が好きだろう!!」
「ありがとうございます!おいしそう…。いただきます!」
杏寿郎はすぐに食べずに桜を見つめる。
桜はぱくっとソフトクリームを頬張るとやはり顔を蕩けさせていった。
それを見て杏寿郎は目を細める。
杏「相変わらず酷く愛らしく、相変わらず酷く無防備だな。桜、もっと寄ってくれ。」
杏寿郎はソフトクリームに夢中になっている桜の肩を抱き寄せると桜の表情を見た男達に向けて殺気を放った。