第11章 夢の中の人
(…不安なこと…、そんな事…ない………。)
桜はそう思いながら次第に視線を落としていく。
鬼殺隊に協力する使命、自身の記憶、ユキの考え、使命を与えた存在、この世界の価値観・常識・生活について…、桜は圧倒的に知識が足りていない。
その中でも使命については、自分と仲間、両方の命に関わる重いものだ。
桜は確かに覚悟は決めたが、覚悟だけでは救えないものもある。
でもそんな事は考えても仕方ないと確信しているから、桜は見ないふりをしたかった。
(それに、仮に口に出したとしても解決はしない…。)
―――解決はしないけど…皆みたいに私もたまには弱音を吐けたら……、
杏「桜。」
静かな声に驚いて、桜はいつの間にか伏せていた顔を上げた。
杏寿郎はそんな桜の鼻に人差し指をトンッと乗せ、真っ直ぐな目を向ける。
杏「桜。確かに考えても解決しないこともある。だが、言うことには時によって大きな意味がある。」
「…………あ…。」
自分でも目を逸らしていた事を見透かされ、桜は酷く動揺してしまった。