第11章 夢の中の人
杏寿郎はタオルを軽く畳むと机の上に置き、小さな照明以外を消した。
そして布団に腰を下ろすと杏寿郎は桜の頭を優しく撫でる。
杏「桜は幸運の白猫だな。あの父上を会ったその日に笑わせるとは。煉獄家みんながもう君を好きみたいだ。」
杏寿郎の声は昼間と違い、とても穏やかで柔らかい。
杏「寝よう。今日は疲れただろう。」
そう言うと杏寿郎は二人に掛け布団をかけた。
そしてもぞもぞと動き、桜をまた自身の腕の中にすっぽりと収める。
先程から何も話さない桜を不思議に思い、杏寿郎は首を傾げた。
腕の中を見ると、じとーっとした目で桜が見つめ返した。
杏「む!どうした!」
「杏寿郎さんは強引です。」
桜は拗ねた声を出す。
杏寿郎は "そうか!" と笑うと桜の背中を優しく撫でた。
そうしているうちにみるみる桜の様子が変わっていく。
(あ……またぽかぽかする………。)
桜はその心地よさが悔しくて、まだ拗ねた顔を維持しようと頑張るが 全く隠せない。
杏寿郎はその様子を大きな目で見つめてから頬を緩ませた。
杏「桜は撫でられるのが好きなのだな。」
そう柔らかく言われて、桜は毒気を抜かれると小さく頷いた。