第56章 戦いを終えて
杏「すまない。俺の前では警戒を解いて良い。…いや、良くない。だが……、」
「……どっちですか…?」
杏「どっちもだ!!信頼されるのは大変嬉しいが、警戒されないのも度が過ぎれば襲いたくなる!!!」
「な、なんで…、」
杏「何故と訊かれても男はそういう生き物なのだろう。美味そうな兎が無防備に寝ていれば食べたくなる、そういう事だ。」
「………………猫がいい…。」
赤くなった桜は杏寿郎の腕の中に収まったまま特に意味の無い言葉をなんとか返した。
杏「そういう問題ではないぞ。兎だろうと猫だろうと君ならば俺は食べる。」
杏寿郎に分かっていた事を真正面から言われると桜は俯いて眉尻を下げた。
(信頼と警戒のバランス…難しいな……。)
「食べられないようにするにはどうしたら良いんですか…?さじ加減がとても難しいように感じるのだけど……。」
(…………………………?)
返事が来ないことを不思議に思って顔を上げると杏寿郎は何かを考えるような顔をしていた。