第55章 遊郭に巣食う鬼
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し「あらあら…。」
出迎えたしのぶはそう言いながら笑っていたが、どこか表情が固い。
その理由はすぐに分かった。
しのぶのすぐ後ろに実弥が立っていたからだ。
杏「…………………………。」
実「……何とか言えやァ。」
「あっ、…こ、こんばんは。……杏寿郎さん?あ、杏寿郎くん?」
杏「……ああ。」
「…えっと、実弥さんが怪我してるから治療するね……?」
杏「うむ。」
充てがわれた病室のベッドに座ってもらうと 桜は腹の傷がよく見えるようにと実弥の隊服を脱がしていく。
その手を側で見ていた杏寿郎が思わず掴む。
「……お仕事です。」
杏「いや…、それは……その、俺がやりたいのだが、やらせて貰えないだろうか。」
実「ハァ!?」
「いいけど…。傷に触れないよう、丁寧にだよ。」
実「お前もやらせんなァ!気色悪いだろォ!!」
「あんまり大きな声出しちゃだめよ!傷に障るでしょ!」
杏「……随分と親しげなのだな。」
実弥は新しい揃いの指輪をしている事を確認してほっとした後、意地の悪い笑みを浮かべた。