第55章 遊郭に巣食う鬼
声の方へ向かうと女の子は酷く荒れ果てた部屋の中で顔を覆いながら泣いていた。
その子はまだ幼く、涙を浮かべる姿はとても痛々しい。
善逸は慌てて駆け寄り宥めるも突如後ろに感じた気配に固まった。
女「アンタ、人の部屋で何してんの?」
その女からする音は紛れもなく鬼の音で、更にそれの異質さから "上弦" の文字が脳裏に浮かぶ。
声が出ず固まっていると苛立った鬼に近寄って来た他の女の子が善逸を庇うような発言をする。
それに鬼、蕨姫花魁が更に苛立つと善逸は漸く口を開いた。
善「勝手に入ってすみません!部屋がめちゃくちゃだったし、あの子が泣いていたので…、」
蕨「不細工だねお前、気色悪い…。死んだ方がいいんじゃない?」
善「………。」
言葉を失う善逸に鋭い暴言が追い打ちを掛ける。
蕨「部屋は確かにめちゃくちゃのままだね。片付けとくように言ったんだけど。」
子「ギャアッ」
蕨姫は片付けをこなせなかった女の子の片耳を掴むとそのまま持ち上げた。
その部屋を片付けるのはどう見ても大人であろうと一人では困難で、蕨姫の命令は理不尽そのものであった。