第10章 お見送りとお父さん
父親を見送ってから千寿郎は桜に駆け寄った。
千「桜さん!大丈夫ですか!?何があったんです!」
「私やっちゃった…。」
そう言い泣きそうな目をする桜。
その体はまだ仰向けで情けない。
桜のその瞳を見て千寿郎は何か勘違いをした。
「……ち、父上に投げ飛ばされたのですか…?」
その言葉にさすがにピクッと反応し起き上がる。
「ち!違う違う!加害者は私です!!」
千「……え?父上に…?何を………??」
そう訊かれ、桜は部屋の内側に倒れている襖に目をやる。
「襖を開けようとしてたら襖に体重かけちゃって、お父さんを下敷きにする形で倒れ込んじゃっ…た…。」
千寿郎はぽかんとした。
「転んでたのは私が勝手に足を滑らせただけです…。」
桜は言いながらまた情けなくなって俯いてしまった。
それを見て千寿郎はハッと我に返る。
千「そ、そうだったんですね…。」
明らかに良好とは言えない親子関係なのに、桜は千寿郎を板挟みにする形になり心苦しくなった。