第10章 お見送りとお父さん
過保護なユキの独断となってしまう為、ユキが桜の為と思った事はいつも正しいとは言えなかった。
気持ちが強すぎ、尚且つ体が一緒であるが故に過去にも自力で桜の記憶を消してしまえた事もあるユキだ。
更に強い干渉は良いものとは言えなかった。
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杏寿郎を送った門の前で、猫と人の体について推測していると、桜は小さくくしゃみをした。
千「あ!大丈夫ですか!?すぐ温まりましょう…!お風呂の準備をしてきます!」
そう言い千寿郎はパタパタと小走りで風呂へ向かった。
桜も家に入り、開けっ放しにしてしまった杏寿郎の部屋の襖を閉めた。
猫に戻って襖を開ける。人になって襖を閉める。
繰り返し練習しているとどんどん楽しくなる桜。
「ま、マスターできた!かも!!」
お風呂を探し、中にいる千寿郎に声をかける。
「千寿郎くん、お湯沸いたー?」
千「あ!えっと…!もう少しです!」
「じゃあ私お父さんに声かけてきます!!」
桜がすぐ走り出してしまった為、千寿郎の "行かずに待っててください!" が独り言になってしまった事に二人とも気が付かなかった。