第10章 お見送りとお父さん
桜は知らなかったが、実はユキは体を失っていない。
詳しく言うと、
まず、ユキが神として存在する為に元々必要だったのは"信仰"であったが、それが"愛"にすり替わった。
その際すぐに、桜がユキを"神"ではなく"友達"として認識した事で、桜の "信仰"も"愛"へと変わった。
―――愛を糧とするユキと、愛を与える桜。
本来ならユキは消える筈だったが、消えるまでの僅かな間に、"存在する為に必要な関係" が新しく確立し、バグが生まれた。
そのバグが崩れかけていたユキの存在のバランスを保ってしまったのだ。
それ故にユキの体も存在も消えなかった。
しかしこの関係の上で存在するユキは、神ではない異質な存在である、"神の亜種"…"神のようなもの"となった。
そんな事は予想していなかったユキは、宣言通り桜の胸に宿り、予想外にも残った体を持て余す形となった。
当然この体には誰も入っておらず、桜にいつでも貸せる状態だった。