第50章 すれ違い
「最近、煉獄さんが親しくしている女性です。恋仲みたいだって噂になってて…。実際に見た隊士さん達も『炎柱様のあの様な顔は初めて見た』と言ってました。」
実「あの煉獄が不誠実な事をするとは思えねェ。……だから昨夜、か。」
「………はい…。」
そう小さく返事をする桜の顔色が青白い事に気が付くと実弥はぐっと眉を寄せる。
実「……桜、俺の任務に同行しなァ。ここに来て治してもらうよりその方が手っ取り早いだろォ。」
「えっ!?そんな…それにお館様からの指令が、」
実「俺から願い出ておけば問題ねぇだろうがァ。そんな事気にする暇があんならすぐ出るぞォ。」
「え、あの、無一郎くんがまだ……!」
桜は戸惑いながらも実弥に手を引かれるまま蝶屋敷を後にし、実弥は眉を顰めながら小さな声を出した。
実「今度こそ死なせねェ。辛気臭い顔をさせる男に文句を言う権利はねぇよなァ。」
―――
実弥は桜を自身の屋敷に連れて行くと緊張している桜に優しく微笑んだ。
実「取って食ったりしねェよ。空いてる部屋は幾つもあるからなァ。」
そう言うと桜に好きな部屋を選ばせ、実弥は入りっぱなしになっていた布団をテキパキと日向に干した。