第50章 すれ違い
「お願い。圧しつぶされそう。今はお仕事に専念したい。いつもみたいにお願い聞いてよ…ユキも私に会わないうちに変わっちゃったの?ユキの信仰者の隊士さん何人も見たよ。なんで会いに来てくれなかったの?私は…一人だとどこへも行けないのに……。」
その言葉をユキがどう受け取ったのか桜には分からなかったが、胸は承諾した様にぬるい温度のまま安定した。
無「桜、西だって。」
「…うん。」
桜は無一郎に手を引かれるとぬるい温度の胸に手を当てながら立ち上がった。
――――――
実「お前…煉獄とはどォしたんだァ?」
「…………………………………。」
蝶屋敷でしのぶが無一郎を診察している間、実弥はとうとうその話題を口にした。
その言葉に桜は言葉を詰まらせた後 自身の薬指をスリッと撫でて目を伏せた。
「ここ三週間会ってなかったのですが、昨夜宿屋に現れて…たぶん煉獄さんは…噂の女性について話をしに……。」
実「噂だァ?」
杏寿郎と同じく隊士達の噂が耳に届かない実弥は眉を寄せて桜の顔を覗き込んだ。
最初は怖かったその目にもすっかり慣れ、桜は眉尻を下げたまま見つめ返す。