第9章 鍛錬
杏「よし!!鍛錬を再開するぞ!!!」
杏寿郎は手をパンパンと叩き、ついた粉を落とす。
千「僕は買い物に行ってきますね。桜さんは…一緒に来たら騒動になってしまいますよね…。」
千寿郎は少し残念そうに微笑んだ。
桜も残念そうに耳を伏せる。
「そうだね…人が多いところへは行けないかな…。」
(人の姿で行っても、男の人がいれば猫になるだろうし…。)
そのやり取りを腕を組んで聞いていた杏寿郎は自身の手を二人の頭にぽんっと乗せた。
杏「では桜はここに残って鍛錬の続きだ!!千寿郎、気を付けて行ってくるんだぞ!」
そう大きな声で言いながらも、千寿郎の頭を撫でる手はとても優しい。
千「はい!では、兄上、桜さん、行って参ります!」
杏寿郎と二人で千寿郎を見送っている間、桜は折れそうになる心を必死に保っていた。
(そ、そういえば百周はただの準備運動だった…。)
しかしハッとしてふるふると頭を振る。
(人を助ける為、生き残る為に頑張ろう、たくさんの命がかかってるんだ!)
そう気合を入れ直し、ビシッと姿勢を正した桜を見ると 杏寿郎の口角は満足気に上がる。
杏「では桜!君は剣術を使えないから先程の続きで走り込みをするか?正直なところ、人以外に指南をした事がないのでどうしたら良いのか分からない!!」
杏寿郎は愉快そうに笑う。
『走り込み』
その言葉をまさかまた聞くとは思わず、気合いを入れ直した桜も少しくらっとした。
「ちなみに他の候補はあるんですか…?」
その言葉に杏寿郎は腕を組むと大きな目で真っ直ぐ桜を見つめる。
杏「そうだな。前代未聞だが呼吸に挑戦してみるか?」