第46章 新しい任務同行者
杏「彼は一度も名乗っていない筈だが。」
「何度か治療したことがあるんです。野方さん、傷はこれで全部ですか?」
その問いに野方は固い表情で頷く。
その額や頬には冷や汗が浮かび、流れていた。
「大丈夫ですか!?一体、」
杏「撫でなくて良い。」
杏寿郎が桜の手をパシッと掴むと桜は杏寿郎を見上げて眉を顰める。
「何のつもりですか。これは私の仕事です。私情は、」
杏「私情を持ち込んだのは彼の方だ。」
「……………。」
顔の青い野方の傍らに座る桜を引き寄せる様に立たせると杏寿郎は部屋を見渡す。
杏「この部屋で君が名を知る者はどれ程居る。」
そう言われて桜も部屋を見渡すと固まる者、俯く者、慌てて布団を被る者も居た。
「…………全員です……。」
杏「これ程早い時間に梃子摺る事無く任務を終わらせ此処で寝ているなど可怪しいと思わないのか。」
し「言っても無駄です。『それだけ頑張ったのよ。』って言って聞き入れてくれませんよ。」
「しのぶちゃん……。だって……、」
しのぶは微笑んでいたが その声は怒りを孕んでいるようにも聞こえた。