第9章 鍛錬
杏寿郎は過去に千寿郎以外の者にも指南した事があった。
だがついてこれた者は一人だけ。
だからこそ杏寿郎は、門の前を通るたびに速度が落ちていた桜の瞳に光が戻ったのを見てとても嬉しく思った。
杏「うむ!!」
笑顔で頷くと自身の木刀を置き、千寿郎の方を向いた。
杏「千寿郎!!!」
杏寿郎が千寿郎の木刀を持って手招きすると、千寿郎は汗を拭きながら目を輝かせて駆け寄った。
千「よろしくお願いします!!」
―――――――――
「ハァッ…ハァッ……」
桜は門の中まで走ってから倒れ込んだ。
(……すっっごい疲れて、体も肺も痛くて死にそうだけど…、それ以上に達成感が…!すごい………ッ!!!)
熱くなった体に冷えた地面は気持ちよく感じる。
達成感の余韻と地面の気持ちよさから目を瞑ると、駆け寄ってきた千寿郎が慌てる。
千「桜さん!!大丈夫ですか!!!」
「…あ……千寿郎くん…。ごめんね、大丈夫だよー。ただ達成感を味わってたんだー…。」
桜は、ふにゃっと力の抜けた声でなんとか答える。