第44章 ※ずるい人
桜は瞬時にそう思ったが、確かに帰ってきた時間が遅かった為 杏寿郎の心を心配する気持ちが生まれてしまった。
そして少し迷う様に視線を下げて動きを止めると杏寿郎は目をスッと細める。
杏「君は本当に言いくるめ易いな。押しに弱い点も心配だ。唯でさえ力が弱いというのに。」
「………えっ!?言いくるめやすいって…さっきの嘘だったんですか…?あ、でも、任務が早く終わったあと しのぶちゃんに体捌きを習いました!」
杏「そうか!!早速試してみろ!!!」
そう言うと杏寿郎は上に覆い被さって桜の手首を抑える。
一方、桜は押し倒されて手を封じられた場合についてはまだ教えて貰っていなかった為 眉尻を下げていつもの抵抗をした。
それを見た杏寿郎は笑みを消すと眉を寄せて険しい表情を浮かべる。
杏「全く出来ていないぞ。毎度この君を見ると複雑な気分になる。何故か分かるか。他の男も容易に見れてしまう姿なのだと嫌でも認識するからだ。」
「この体勢はまだ習ってないだけです…!」
杏「そうなのか。だが解決方法がある様に思えるか?」
そう心配そうに問われると桜は一つの心当たりにハッとする。
(男の人の………弱いところ…。でもさすがに今やるのは可哀…、)
桜がそう情けをかけようとした時、杏寿郎は桜の首筋をペロッと舐めた。
「…ッ!!!」
杏寿郎は普段首を舐めたりはしなかった為 酷く驚いた桜は思わず思い切り杏寿郎の大事な場所を蹴り上げてしまった。