第43章 弱いこころ
杏寿郎は目が合った事に嬉しそうな表情を浮かべると再び口付ける。
(相変わらず押しが強い…っ)
「んーっ」
口を塞がれたまま不満一色の声を出すも杏寿郎は止めなかった。
しかし、ある事に気が付くと桜は胸を押す力を緩める。
(………舌、入れてくる気配がない…。)
触れるだけの口付けでは桜の体は熱くならない。
それ故に余裕が生まれると只々愛情表現をする杏寿郎を愛しく思う気持ちが湧いてきた。
そして心が温かくなると目を細める。
(ああ……………好きだなあ……。)
そう思った瞬間、受け入れる様な空気を感じ取った杏寿郎は一度顔を離してからにっこりと微笑み、すぐに再び口付けると今度は迷わず舌を入れた。
(…えっ!?……ッ!!)
「……っ…、まっ、て…ッ!!」
その制止の言葉を聞くと杏寿郎は顔を離し、不可解そうな表情を浮かべながら首を傾げる。
杏「先程受け入れたろう。舌を入れない口付けだろうと裸になって愛す方法だろうと、基本は同じ、愛する気持ちの表現だ。方法は二の次に着目すべき点だと思うぞ。」
「……わ、わたしの余裕が…なくなります…。舌を入れるか入れないかは大きな違いがあるかと…。」
桜が赤い顔を手の甲で隠し息を少し乱しながらそう尤もな事を言うと、杏寿郎は貼り付けたような微笑みを浮かべてから一度口をきゅっと結んだ。