第43章 弱いこころ
杏寿郎はその空気を変える様に眉尻を下げて優しく微笑むと まだ居心地悪そうにしている桜に何度も軽く優しい口付けを繰り返した。
「ちょっ、と……っ、まって…くださ……っ」
胸を押しても顔を背けようとしても止めてくれそうにない様子に眉尻を下げていると口付けが段々と柔らかく長いものになっていく。
(完全に杏寿郎さんのペースだ…。最近は大抵そうだけど……。)
桜は理由がない限り、二日に一度は断るようにしていた。
その理由は単に断らないと毎日になってしまいそうで怖かったからだ。
(昨夜…というか、半日前までしてたんだもの…だめだ。毎日がクセになってしまったらきっともっと杏寿郎さんのペースになってしまう。)
そう思うと桜は杏寿郎の髪を引っ張る。
杏寿郎はすぐに気が付いて顔を離すと眉尻を下げてしおらしい顔をした。
杏「駄目か?飛び切り甘く愛すぞ。」
その提案に桜は目を閉じたままなんとか首を横に振る。
杏「頼む。桜…お願いだ。」
よりしおらしい声になると桜は耳も塞いだ。
「ずるい!杏寿郎さん、それわざとやってませんか!?」
杏「む、分かられてしまったか。狡くてすまない。君が相手となると普段使わない手も使いたくなってしまう。」
あっさり白状され謝られると桜は何も言えなくなり、瞼を上げてただ不服そうな目を向けた。