第8章 覚悟と条件
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桜は振り袖をきちんと着れていることをよくよく確認してから覚悟を決め、千寿郎に頷いた。
緊張してないといえば嘘になるが、それよりもこの家の事についてもっと知りたいという気持ちが強い。
(どんな人であろうとしっかりと誠意を持って、お許しを頂けるように努めよう…!)
千寿郎くんはある一室の前で止まると桜を見上げて、 "ここです。" と小さく呟いた。
千「父上、今お時間よろしいでしょうか。」
千寿郎は固い声で呼びかける。
静寂のあと、もぞもぞと動く音がしてから、
父「なんだ。」
と低くぶっきらぼうな声が返ってきた。
千「……ここで住まわせて頂きたい方を連れて参りました。許していただけるならご挨拶を、と…。」
若干声が震えていたが、大きめな声で千寿郎は答える。
父「………入れ。」
それを聞き千寿郎はパッと顔を上げ桜にアイコンタクトをすると襖に手をかけた。
千「失礼致します。」
しかし、その時桜はついこわばり、ぽんっと軽い音が響いてしまった。