第2章 【前日譚】恋と呼ぶには近すぎて
「で、相談ってなんだよ」
この時期は学校も早く終わる、冬休みが近い、俺たちが卒業するに向けて今まで広げていた風呂敷が少しづつ、確実に畳まれていくような。
終わりに向かってひた歩いているような、そんなノスタルジーな気持ちになる。
「内山のことなんだけど」
冬の昼過ぎの公園で、藤堂はブランコを足で揺らしながら俺をチラリと見た。
「俺、内山が好きなんだ」
と
その時の心境を例えるなら、怯えが一番近いだろう、なにに怯えていたかは定かではない。
なにかやってしまったような、何か言い当てられたような、そんな気持ちだ。
「…俺に言ってどーすんだよ」
相談ってそんなことかよ、と不満をあらわにすれば申し訳なさそうに藤堂は下を向いた。
「お前幼馴染みだろ?内山誕生日近いじゃん。なんか好きな映画とかさ、ないわけ?」
知るかそんなこと、と言うのが率直な感想だし、おそらく答えを求められればそう答えるだろう。
「女だったら恋愛映画とか好きなんじゃねーの、俺そんな仲良くないし知らねーよ」
というか誕生日が近かったのか、そっちの方が驚きだった。
「仲良くないことないだろ、前は一緒に帰ってたりしてたじゃん」
「いつの話だよ、とにかく知らねーっての、あいつの誕生日が近いことも覚えてなかったって」
マジ、と付け加えるとまあ詳しくても凹むか…と藤堂は1人ごちた。
藤堂は彼女が好きなのか、誕生日に映画に誘うのか?帰り道に告白するとか?
2人で楽しそうに微笑みあってるのを想像して奥歯を噛み締める。嫌な想像をしてしまった、と思うと同時になんだかモヤモヤした気持ちが蔓延る。
いっそ心臓を取り出して洗いたいぐらい嫌な感じだ、この気持ちはなんだろう。
彼女に藤堂を取られるのが嫌なんだろうか?
それとも同じ野球を頑張ってきたもの同士、そういう痴情の縺れ…みたいなのは聞きたくなかったのだろうか?
自分の気持ちがあまりにもわからなくて、なんだか気分が悪い。こういう思いは誰に相談すればいいのだろう?一体誰に。