第2章 【前日譚】恋と呼ぶには近すぎて
横から帰り支度を終えた藤堂が話しかけてくる。
その事に一抹の後ろめたさを感じてしまう、一体なぜ?
「あ、藤堂、居たんだ」
「ひでー、内山今帰り?」
「ううん、先生に居残り申請するついでに来た」
「居残り?またか?」
そういえば昨日も帰りが遅かったんだ。
昨日は進路相談と言っていたが、今日は部活だろうか。
「うん、練習試合が近いから三年いなくても大丈夫なように気合入れるって、斎藤くんが」
「へー、あいつ頑張るねー」
藤堂の言葉にそうだな、と返して彼女から目を逸らす、俺達はもう部活に裂く時間もないからこうして引退してるけど、コイツはマネだからと言う理由で部活に残ってる。
中学の部活にマネがコイツしかいない、と言うのも理由だ。
選手ほど受験と両立できないわけでもないポジションゆえか引き止められてしまい、ずるずるとこの時期も部活を続けている。
「そんじゃあ、俺らもう帰るから、部活頑張れよ〜」
藤堂が言って俺の肩に手を回す、彼女はまたね、と藤堂に手を振ってから俺に目を合わせた。
気恥ずかしさゆえだろうか、それとも相談がある藤堂に気が逸れたのか、顔を背け、じゃ、と短く言ってその場を離れた。