第4章 冬 合否発表
「内山さん~!引っ越しちゃうなんてさみしいわ~!あ、神楽ちゃん!合格おめでと~!うちの梓もなんとか合格したみたいなの、よかったわ~!」
ころころと元気よく花井のお母さんが笑う
あがってあがって、と言われて部屋に上がる、花井はどこにもいないようだ
「これ引越しの!」
とお母さんが言うと花井のお母さんも喜んで受け取る
「梓くんにお祝い言いたかったのに、今居ないの?」
双子は今ゲーム機に電源を入れている。その光景を眺めつつ後ろの会話に聞き耳を立てていた
「そーなのよ、あの子今さっき走り込みしてくるから~って家飛び出しちゃって、もう野球部引退してるのによ」
なるほど、だからさっきは連絡が帰ってこなかったのか、二人共花井に携帯借りてるから花井が携帯持って出てっちゃったら返信できないもんね
それからしばらくゲームで遊び、きゃいきゃいやってたらお母さんがそろそろ帰るよーなんて言うから双子がぶーたれてしまった
「やだ~!まだ神楽と遊ぶ!」
ひしっと腕に抱きついてきた双子を見てお母さんが困ったように眉を下げた
「ごめんなさいねうちの子が」
花井のお母さんも頬に手を当ててこちらを見た
「ごめんなさいね花井さん、そろそろスーパー行きたいのよ……」
とお母さんがバツの悪そうに花井のお母さんを見ると花井のお母さんは何でもないように
「あら、それは大変ね…内山さんが良ければ預かっておこうか?」
と言った、大人の会話はこんな感じで展開されていく、それでうちのお母さんは待ってましたと言わんばかりに
「え!いいの?花井さん嬉しいわ~!やっぱりまだ中学生だもの、一人にしておくのは心配で…」
と返すのだ、なんというか、こすいというか…
「わかるわあ、うちみたいに何人かいるといいんだけど、一人となると余計ねえ」
そうなのよー!と声を上げたところで私の延長が決定したことを悟った双子が次のゲームを入れてくる
それでまた遊んでたら玄関でがちゃりと音が鳴った、あ、と思うのも束の間花井のただいまーという声が部屋に響く
お兄ちゃんおかえり~!と双子が声を上げて、花井のお母さんも梓あんたいつまで外出てんの~と声をかける
廊下の扉が開いて花井が別にいいだろ、と声をかけるのと私と目が会うのはほぼ同時だった