第4章 冬 合否発表
私は先ほどの花井との会話を思い出しながらテレビを見る
野球は好きだ、やる方じゃなくて、観戦の方
もちろん昔はやるのも好きだった、小学生の時は草野球してもずっと楽しかった、でもやっぱり私は女の子で、いつの間にか球拾いばっかしてたのを思い出す。
花井はもう中学野球を引退してしまったが、私はまだマネージャーとして顔を出したりしてる
女子野球はうちの学校になかったし、結局女の子は野球をするに値しないのだ
はあ、とため息をついてポトフを待つ
「せっかく合格したってのにため息?」
おぼんにポトフを載せたお母さんが来た
「梓と一緒に帰ったときに高校でもマネージャーするのかって聞かれてさ…」
「へえ、するの?はいスプーン」
ソファに座ってる私とは対照的にお母さんは座布団に座っていた
スプーンを受け取って私はソファからおしりをずらして床に座る、うーんと不明瞭な声を出せばお母さんは困ったようにこちらを見た
「高校生なんて一番楽しい時期じゃない、梓くんは?」
「いや、梓は野球するつもりあんまりないっぽいよ」
その言葉にお母さんは声を上げる
「中学で主将やってたのに!?」
「ねー」
ずず、とポトフをすする
食事を終えてお母さんが花井の家に行く準備をする
私も久しぶりに飛鳥と遥に会うのが楽しみだ、向こうにも話は言ってると思うし、なにかして遊びたいなぁ
携帯を見ると花井からメールが来ていた
花井がメールをよこすとはめずらしい、と思いながら開くと飛鳥と遥が送ったらしい文面が届いている
ゲームして遊びたいからリモコンとソフトを持ってきてね!と書いてあった、3人で通信でもして遊ぶのか?
リゾートでいい?とメールを返してカバンにソフトとリモコンを詰める、どうせお母さんの話は長いので、がっつり遊んじゃおう
支度が終わって携帯を見ても返事がない、おや?と思いつつお母さんが玄関で呼ぶもんだから急いで靴を履く
「梓くんから?」
「え?なんで?」
よくわかったな、という意味で聞き返すとお母さんは視線を逸らして女の勘…?と意味のわからないことを言ってのけた
「飛鳥と遥からだよ、ゲームしよ~って」
「……そ」
なんだなんだ?お母さん、目をそらして遠くを見てしまった
へんなの、と思いつつエレベーターに乗る、花井の家につけば双子の姉妹は元気よく迎え入れてくれた