第4章 冬 合否発表
「ただいまー」
そういえば昔は梓って呼ばせてくれたのに、中学上がって少ししたらすぐに花井って呼べなんて何回も言ってきたな
あの時は何がなんだかよく分からず気迫に押されて花井なんて読んでたが、今考えると確かに梓って名前はちょっとかわいいから気にするのかも
私のことも内山、なんて呼んでちょっと距離が離れて寂しい思いをしたのも今となってはいい思い出だ。
「おかえり!神楽あんた携帯!なんでメールみないのよ!」
奥の部屋から母さんが覗き込む、そういえば合否わかったら連絡しろって言われたな
「ごめん、花井…梓居たから一緒に帰ってたら忘れてた、受かったよ」
荷物を降ろしてマフラーを解きながら言うとおめでと~!よかったわあ、と胸をなでおろしてるところが見えた
「梓くんと一緒に帰ってたの?後で行くってちゃんと言った?」
「うん、わかった~って言ってたよ」
コートを脱いでハンガーにかけて制服を脱ぐ、もうこの制服ともおさらばと思うとなんだか感慨深い気持ちになった。
後で花井の家に行くから…私服に着替える
「あそだお父さんね、引越しの日手伝いに来てくれるって言ってたから!」
「お父さん?」
服を着替えて台所のお母さんのところに行く
お父さんは単身赴任中、お母さんは専業主婦だ。
「そ、久しぶりに神楽に会える~って大喜びだったわよ」
どこだったっけ、確か大阪とか、そっちの遠いところだったような気がする。
冷蔵庫の中のパックの紅茶を取り出すついでにお母さんの手元を見た
「へ~、お昼何?」
「ポトフ。食べちゃったら花井さんのコトロ行くから準備しときなね」
はあいと返事をしてソファに座る
コップに紅茶を入れてガラケーを開く、とりあえずお父さんに受かったよ~とメールを打つ
多分まだお昼前だから仕事してると思うし、見るのは遅くても1時か2時頃だろう
テレビをつけると野球のニュースだ
高校でも野球のマネージャーやるの?…か…