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【おお振り】野球と青

第4章 冬 合否発表


「そういえば花井チャリ通にすんの?」

「おう、チャリ通、なんで?」

そこで花井を見る、彼もこちらを見て目があったあと、なんだよ、と嫌そうに聞いた

「引っ越すって、話したっけ?近くに」

ちゃんと言ったのにさては忘れてたな?と見上げる、花井はしばらくこちらを神妙な顔で見たあとに

「………あー、そういえばそんな話してたな」

と何でもないように言った、なんだ、興味なかった方か

「なに、歩き?」

「うん、花井がチャリンコを漕いでる間に悠々自適に帰るってわけよ」

「自慢かよ、引越しいつ?」

「受かったって報告したら準備して…来週ぐらいかな……あ、今日お母さんが花井の家に挨拶行くって言ってたから、多分私も行く」

その言葉に花井が大げさにこちらを見た

「は!?なんで!?」

「え?家近いし飛鳥と遥に会いたいし…?まああとうちの母さん仲いいじゃん、だからじゃない?」

しばらくこちらを見てた花井は飛鳥と遥…と自分の妹の名前を復唱したあと、そっか…と不思議そうな顔をして正面に向き直った

しっかしいきなり大きな声出してびっくりした、なんか変なことでも言っただろうか

「なんか、引っ越すのに高校同じって変なカンジだ」

「そう?家近くなったし昔みたいにウチ来て遊んでもいいよ」

そう言うと花井は嫌そうにこちらを一瞥した、そんな嫌がらなくても…

「お母さんがさ、ウチが近くなったからって高校の友達とか連れてきてたむろするな言いだして、困っちゃうよ」

それから他愛のない話をいくつかして家が近くなる、同じエレベーターに乗り込み階を押して壁に背中を預ける。花井は私より上の階の人だ

「もうこうやってエレベーター乗ることもないのか」

そう言うと彼はそっちはマンションじゃないもんな、と返す

「昔ながらの日本家屋って感じ」

花井を見上げると彼と目が合う、あー、と言葉を濁して何かを言おうと口ごもる

なんだ?と思うと同時に、エレベーターの音声が自分の階についたことをお知らせしてくれた

「じゃあまた後でそっち行くから、よろしく」

「おー」

エレベーターを降りて、なんか言いかけてたな、と思い振り返る

なにか驚いたような表情の花井と目が合って、そのままエレベーターは上の方に逃げていった

「なんだろ」

そう言うと私はカバンの中をまさぐりながら自分の家に向かった。
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