第4章 冬 合否発表
「無視することないじゃん」
「~~~!大声出すなよ…!」
追いつくと特に引き離すわけでもなくそこそこの距離を取る
「いやごめん、つい」
彼は私の幼馴染の花井梓、小学校中学校ともに同じ、私は双子の妹の方と仲が良かったが同じ野球好きということもあり、昔はちょこちょこ一緒に遊ぶ仲だった
中学校の頃も私は野球部のマネジやってて、まあ、腐れ縁じゃあないけど…なんだろう、仲がいい、のかな
「落ちた?」
「そこは受かった?って聞くところだろ、受かったよ、そっちは」
「受かった」
そうかよ、と返して会話が途切れる、花井を見上げると彼は居心地の悪そうに帽子を直していた
「高校でも野球やんの?」
顔を見たあとに足元を見る、彼は大きいから歩幅が違う、ゆっくり歩いてるのを見るにどうやら速度は合わせてくれているらしい
「知らねー、野球するためにきたわけじゃねーし」
なんだかんだこういう優しいというか、突き放す割には嫌に甘いところもある
そっか、と返すと花井が居心地の悪そうなまま視線をよこす、正面からかち合ったあと彼は目をそらし、ちょっと控えめな声で
「…またマネジやんの?」
と、言った
「んー、決めてない、野球好きだしやりたいけどね」
花井という人はちょっと人目を気にするところがある、プレッシャーに弱いというか、繊細というか
なので私があまりにも乗り気だと野球部に入るかも危うくなるのだ
なんというか、身内のあれそれを体外に持って行きたくないというのだろうか、あまり私の紹介も乗り気じゃないし
「そっか」