第5章 T.04
「無視してんじゃねえええええ」
オールスルーした訳だから、もちろんのように怒り出すイギリス。
フランスに取って掛かりそうな勢いだけど大丈夫なのか…。
「まったくー…イギリスはせっかちだなぁ。全然美しくないぜ」
やれやれ、とでも言うように肩を竦める。
「ってめ……!」
「で?子猫ちゃんの名前は?」
イギリスが反論をする前にフランスはさっさと話題を変えた。何だこの技は。すごい、なんていうか、手慣れてる…。
「私は由真って言います」
「おー、由真ちゃんね。いい名前だ。あとはその丁寧語、辞めてくれるとお兄さん嬉しいな〜?」
完璧にイギリスを置いて話が進んでいる。
でもイギリスもフランスにいちいち反論するのも埒が明かないと考えたらしく、仏頂面でこちらを見つめている。
「丁寧語?…え、ああ…。わかった!よろしくフランス」
「よしよし、上出来だ」
そう言ってフランスは
私の髪を手に取り、
ちゅ、と口をつけた。
「な、ななっ、ななななななな!」
「あぁ、そうか東洋人はこういうの慣れてないんだっけ?」
「なっ何やってんだよフランス!!由真から離れろ!!」
慣れてないだなんてレベルじゃない。
こんなの初めてだ!!
経験したことのないような恥ずかしさが身体を巡って、顔に自然と熱が集まる。
あああああなんだもうくるくるする!!
「なに必死になっちゃってんのイギリスー?」
「お前が変なことするからだろーが!!ああもうニヤニヤすんな!!」
こんな会話を聞く余裕は私にはなかった。
恐るべしフランス………!