第58章 大正“浪漫”ー拾ー
もうじきにたどり着くところで、人の気配がした。
「霧雨さん!!!」
しのぶだった。
私はその後ろにガラスの姿を見た…呼んできてくれたのか。
「しのぶ、すみません、この子を」
体の小さなしのぶにおぶれるだろうか。少し不安になったが、その後ろに数名の隠が見えた。
「ええ、ですが霧雨さんも…」
「歩けます。気を失うまであと五分と十コンマ数秒です。歩けます。」
「………何ですかそれ」
無一郎くんを隠の人が中へ連れていく。
私はそれに続いた。
「霧雨さん、同じ病室ですが良いでしょうか。今朝に多くの隊員が運ばれたので、それと同室になりますが。」
「何でも良いです。」
私たちは同じ部屋に通された。無一郎くんは私の隣に寝かせられた。
「しのぶ、あの子は」
「大丈夫。傷は浅いです。」
「そう。忙しい時にごめんなさいね。」
「いいえ。」
「……。」
その時、私は目蓋を閉じた。
先ほどの予告通りの時間になると、私は意識を手放した。