第58章 大正“浪漫”ー拾ー
私は右肩をおさえた。
…少し痛い。
「……やりたいことは、できたのかな」
お館様に聞かれ、少し沈黙した後に話した。
「はい。」
それは迷いなく答えた。
「、君は鬼殺隊としての職務を放棄した。鬼を斬り続けたとはいえね。」
…夢の中とは言えずいぶんな状況だ。
「だから処罰を与える。いいね」
まあ、文句はない。
「手紙にあった継子の解任は認めない。以上。」
「は?」
思わぬことに生意気にもそう返してしまった。
ん?まって?まってまって?
…継子を解任するとは言った。前世でも、私の元から勝手に抜け出した無一郎くんは解任した。
けれど、確かお館様にそう言われて…。
微妙だけど繋がってる。前世と夢。
「………それだけ?」
「それだけ。」
私がぽかんとしていると、後ろの柱達は当然怒りを覚えるわけだが、口に出す者はいなかった。
「君の屋敷は修復しておいた。中の荷物全て無事だ。戻ると良いよ。」
私は頭を下げた。
お館様が一言二言挨拶をして、いなくなった瞬間に。
背後から来た。
不死川くんだ。体が反射的に動く。バキッと指をならして、彼の拳を受け止めそのまま腕をつかむ。
(あ)
反射。
これはもう止められない。
気づけば不死川くん相手に一本背負いを華麗に決めていた。
「………ごめん…つい…」
慌てて手を離した。
背中を打ち付けた不死川くんは目をぱちくりさせていた。
「ぶっ」
それに宇髄くんが吹き出す。
「おいおい不死川、お前じゃ勝てねえって。」
と言いながら彼も向かってきているので不死川くんから手を離した。
今度は反射的に動くこともせずにいた。
「ほい」
「ッ」
右肩を思いっきり手刀された。
いって。
「あんたがいなくなった穴俺が埋めたんだからなー?感謝しろよ?」
「……どうも…」
私は痛む右肩をおさえ、心から感謝した。